1972年の早稲田大学で起こった衝撃的な学生リンチ殺害事件を題材にしたドキュメンタリー映画『ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ』が公開されました。この映画は、学生運動終焉期における「内ゲバ」の真相に迫り、当時の熱量と悔恨を描き出す貴重な作品です。
監督は代島治彦、原案は第53回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した樋田毅のルポルタージュ『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』です。映画は、池上彰、佐藤優、内田樹ら知識人の証言と、鴻上尚史による短編劇を織り交ぜた構成となっています。
1972年11月、早稲田大学文学部キャンパスで第一文学部2年生の川口大三郎が、新左翼党派・革マル派によって凄惨なリンチを受け、命を落としました。この事件は、当時の学生運動がいかに過激化していたかを象徴するものでした。映画は、川口大三郎の死をきっかけにエスカレートした内ゲバの不条理を描き、当時の関係者や知識人たちの証言を通じて、その真相に迫ります。
ドラマパートでは、『ソロモンの偽証』や『五億円のじんせい』で知られる望月歩が川口大三郎役を熱演しています。鴻上尚史による演劇スタイルの再現は、事件の生々しさと当時の学生たちの葛藤をリアルに描き出しています。
この映画は、内ゲバを単なるスキャンダルや異物として捉えるのではなく、当時の普通の学生たちが直面した現実とその葛藤を描いています。暴力に反対し、自由を求めて戦った彼らの姿を通じて、非暴力の重要性と大学自治の意義を問いかけます。また、早稲田大学が革マル派と長年にわたって関係を持っていたことに対する問題提起も含まれています。
池上彰、佐藤優、内田樹といった知識人たちが、当時の学生運動や内ゲバについて語る証言パートは、非常に説得力があります。彼らの視点から見た内ゲバの不条理や、当時の社会状況について深く知ることができます。
鴻上尚史の演出によるドラマパートは、実際の事件を基にしたリアルな再現劇です。川口大三郎の生涯と、その死を通じて描かれる学生たちの苦悩や葛藤は、観る者の心に深く響きます。
映画『ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ』は、1972年の早稲田大学で起こったリンチ殺害事件を題材に、内ゲバの真相に迫るドキュメンタリーです。知識人たちの証言と、鴻上尚史による演劇が融合し、当時の熱量と悔恨を浮き彫りにします。この映画を通じて、過去の出来事を再検証し、非暴力と自由の重要性を考えさせられること間違いありません。興味のある方は、ぜひ劇場でご覧ください
2024年製作/134分/日本
配給:ノンデライコ
劇場公開日:2024年5月25日