今日は、今話題のドキュメンタリー映画『リッチランド』をご紹介します。この映画は、第2次世界大戦中にマンハッタン計画のもとで生まれた町、リッチランドの知られざる歴史と現在を描いた作品です。
ワシントン州南部にある平和で美しい郊外の町、リッチランド。ここは、1942年から始まったマンハッタン計画の核燃料生産拠点「ハンフォード・サイト」で働く人々とその家族が生活するために作られた町です。この町の誕生と発展の歴史、そしてそこに住む人々の複雑な心情を描いたドキュメンタリーが『リッチランド』です。
リッチランドの住民たちは、原爆が戦争の早期終結を促したことを誇りに思う一方で、多くの命を奪った原爆の開発に関与したことに葛藤を抱えています。また、現在も核廃棄物による放射能汚染への不安を抱えながら生活しています。町に住む多くの人々が「川の魚は食べない」と語るのもその一例です。
この映画では、被曝3世であるアーティストの川野ゆきよがリッチランドを訪れ、住民たちとの対話を試みるシーンが描かれています。彼女の視点を通じて、リッチランドの人々の日常生活に常に影を落とす“原爆”の存在が浮かび上がります。
リッチランドの地元高校の校章がキノコ雲であることや、被曝による健康被害で早世した人が多いことが強調されています。計画的に作られた美しい町と、先住民の土地を奪って汚染した過去との対照も、この映画の大きなテーマの一つです。
『リッチランド』は、核兵器の開発とその影響について深く考えさせられる作品です。このドキュメンタリーは、リッチランドの歴史と現在、そして住民たちのさまざまな声を通じて、近代アメリカの精神性や科学の進歩がもたらした人類の“業”を重層的に浮かび上がらせています。
