メキシコのテキーラは、その歴史と伝統に彩られた美しい土地で生まれました。しかし、近年、世界中の蒸留業者が新たな道を切り開こうとしています。彼らはメキシコのリュウゼツランを原料として、独自のスピリッツを生み出し、テキーラの枠を超えようとしています。今回は、その中でも特に注目すべき一例、スコットランド生まれのアンドリュー・クラーク・ハッチソン氏率いるダークアート蒸留所の挑戦に焦点を当ててみましょう。
ダークアート蒸留所は、スコットランドの風景に囲まれたギャロウェイ森林公園近くに位置し、ジンから地元産のアガベ スピリッツへと舵を切りました。その代表的なスピリッツ、ヴェスペロ ブランコは、その独特なアクセントとともに、"メキシコ生まれ、スコットランドで蒸留"というキャッチフレーズで世界に挑みます。
メキシコで蒸留されながらも、テキーラとは呼べないこのスピリッツは、100%オーガニックのブルーウェーバーリュウゼツラン、酵母、水だけを使用しています。マスターディスティラーのジェラルド・マクラスキーの手により、甘い草の香りとトフィーのニュアンスが広がり、宇宙のように滑らかで温かみのあるペッパーのような味わいが楽しめます。
そして、メキシコに限らず、世界各地でリュウゼツランを原料としたスピリッツが注目を集めています。ドイツ、オランダ、ペンシルベニアなどでは、メキシコ産のリュウゼツランを輸入し、独自のスピリッツを蒸留し始める蒸留所が登場しています。さらに、オーストラリアや南アフリカでは、リュウゼツランの栽培が盛んに行われ、地元産の蒸留酒ブームの火付け役となる可能性を秘めています。
今後の展望は明るいです。新たな地域でのリュウゼツランの栽培や蒸留の取り組みが、世界のスピリッツ市場に多様性と刺激をもたらすことでしょう。しかし、メキシコのテキーラが依然として世界をリードする地位にあることは間違いありません。異文化の出逢いが生み出す新たな風味、新たな旅がこれからも続くことでしょう。
画像：メーカーHP引用
