2024年公開の映画『追想ジャーニー』第2弾は、前作で観客を魅了した会話劇のスタイルを引き継ぎつつ、さらに深いテーマと感動を提供してくれる良作です。監督は再び谷健二が担当し、キャストには舞台「刀剣乱舞」シリーズで活躍する松田凌、そして演技派俳優の渡辺いっけいが加わり、世代を超えた「同一人物」の物語を魅力的に描いています。
本作の主人公は、かつての輝かしい夢を追いながらも、次回作の執筆に行き詰まる中年の脚本家、横田雄二(渡辺いっけい)。彼のもとに、「退行睡眠」という方法で過去の自分と向き合うことができるという謎のメールが届きます。横田は、30年前の自分にアドバイスを送り、未来の自分を成功した脚本家へと導こうと決心します。
しかし、30年前の若き日の横田(松田凌)は、理想としていた未来の自分が現実とは大きくかけ離れていることにショックを受けます。彼は戸惑いながらも、未来の自分からの助言に従い、演劇仲間との約束や、自身のファンである麻美との出会いによって、別の「新たな世界線」を歩み始めます。この追想の旅を通じて、横田は自らの過去や後悔と向き合い、新しい道を模索することになります。
本作の大きな見どころの一つは、30年の時を超えて同一人物を演じる渡辺いっけいと松田凌の絶妙な演技です。年齢や経験の違いを巧みに表現しながらも、同一の人物であるという説得力を持たせており、観客を強く引き込む力があります。特に、未来の横田が若い頃の自分に助言を送るシーンでは、人生の選択肢や後悔をテーマにした深い対話が展開され、観る者に多くの考えを残します。
「追想ジャーニー」は、人生における後悔や夢破れた現実に直面するシリアスなテーマを描きながらも、決して暗く重苦しい雰囲気にはなりません。物語全体に流れるシニカルな笑いが、作品を軽やかにし、観客にとって親しみやすいものにしています。後悔は誰しもが抱えるものですが、それを乗り越えるための勇気や希望を、軽快なテンポで描いています。
音楽と演出は全体を引き締める重要な要素ですが、いくつかのシーンでキャストのセリフが音楽にかき消されてしまう部分があるのは少し残念な点です。しかし、ラストシーンの演出は美しく、深い余韻を残します。過去を振り返りつつ、未来へと歩み出す横田の姿は、多くの観客に様々な感情を呼び起こし、鑑賞後の余韻を大切に感じさせてくれます。