映画『ラストスマイル』は、テレビドラマ『アンナチュラル』や『MIU404』で知られる塚原あゆ子監督と野木亜紀子脚本家が再タッグを組んだ注目作。両シリーズと同じ世界線で起こる連続爆破事件を軸に、社会の闇に迫るサスペンス映画です。
物語は、世界的なショッピングサイトの関東センターから配送された段ボール箱が突如爆発する事件が発端。その事件が11月のブラックフライデー前夜というタイミングで起きたことから、瞬く間に日本全土を巻き込む連続爆破事件へと発展します。
事件の舞台となる関東センターに着任したばかりの舟渡エレナ（満島ひかり）は、チームマネージャーの梨本孔（岡田将生）と共に、混乱する現場で対応を迫られます。しかし、事件の背後に潜む真実に迫る中で、二人が直面するのは一筋縄ではいかない複雑な人間関係や隠された陰謀です。
本作の魅力の一つは、ドラマ『アンナチュラル』や『MIU404』からおなじみのキャストが再集結している点です。舟渡エレナ役の満島ひかり、梨本孔役の岡田将生を中心に、事件に巻き込まれる関係者として阿部サダヲやディーン・フジオカが登場。さらに、捜査を担当する刑事役として『アンナチュラル』の大倉孝二や『MIU404』の酒向芳が共演します。
そして何より、石原さとみ演じる三澄ミコトや井浦新演じる中堂系、綾野剛と星野源による伊吹藍と志摩一未といったおなじみのキャラクターたちが、物語に自然な形で絡んでくるシーンは、ファンにとって見逃せません。
主題歌は前作同様、米津玄師が担当し、作品の空気感をさらに引き立てます。
『ラストスマイル』の見どころは、単なるサスペンスにとどまらず、現代社会の問題をリアルに描いている点です。ネットショッピングサイトの裏側で働く人々の過酷な労働環境や物流業界の課題が、物語の随所に散りばめられています。映画を見終えた後、社会の在り方について深く考えさせられるようなテーマが、作品に厚みを与えています。
また、段ボール爆弾という斬新な設定と、テンポよく展開するストーリーが、観客をハラハラドキドキさせ続けます。監督・脚本家・キャストの三位一体で生み出されたこの絶妙な緊張感こそが、『ラストスマイル』最大の魅力です。
本作で特に注目したいのは、主人公・舟渡エレナを演じる満島ひかりの演技です。彼女のミステリアスな存在感が物語全体の主軸となり、観る者を物語に引き込みます。赤い衣装に身を包み、冷静かつ感情が読みにくいエレナというキャラクターは、まさに満島ひかりだからこそ表現できた役どころでしょう。
難解なキャラクターを演じる上で、観客が置いてきぼりにならないようにしつつも、サスペンス性を失わない絶妙なバランスを保っているのは、監督や脚本、そして満島ひかりの力量に他なりません。
2024年製作／128分／G／日本
配給：東宝
劇場公開日：2024年8月23日
