劇団「野生児童」主宰の有田あんが、監督・脚本・主演を務めた『渇愛の果て』は、妊娠と出産をめぐる現実を描いた群像劇です。物語は、「普通の幸せ」を夢見る山元眞希の妊娠をきっかけに展開します。彼女は高校時代からの親友たちに、将来子どもが欲しいと語り続けてきました。しかし、出産予定日が迫るなか、緊急入院することになります。そして、出生前診断の結果、赤ちゃんが難病を患っていることが判明します。
物語は、眞希が医師からの選択を迫られ、友情や家族との葛藤に直面する姿を描きます。眞希の妹である渚にだけ本音を語り、親友たちには打ち明けられないまま、彼女は自身と家族の未来を模索します。そのなかで、親友たちが眞希の出産パーティを計画するものの、それぞれの考えや価値観がぶつかり合います。
『渇愛の果て』は、女性監督ならではの優しい視点で描かれた作品です。妊娠や出産という人生の岐路に立つ女性たちの姿を通して、友情や家族愛、そして男性としての在り方についても問いかけます。また、物語の中で時折入る舞台っぽい演出は、作品に独特の魅力を与えます。
『渇愛の果て』は、現実の喜びと悲しみ、そして人間関係の複雑さを描き出す傑作です。有田あん監督の繊細な演出と、キャストの演技力が見事に融合し、観る者の心に深く刻み込まれるでしょう。この作品は、人生の重みと美しさを優しく、しかし力強く伝える不朽の名作となることでしょう。
2023年製作／97分／日本
配給：野生児童
劇場公開日：2024年5月18日
